【PP攻略シリーズ 第2回】PP素材はなぜ印刷が難しいのか?― ダイン値(表面エネルギー)という見えない壁 ―

ポリプロピレン(PP)は、工業製品で非常によく使われている素材です。
軽くて丈夫、耐薬品性も高く、ヘルメットや各種部品など幅広い用途に使われています。

しかし一方で、印刷や接着の世界では「難素材」として知られています。

「印刷してもすぐ剥がれる」
「最初は付いているのに擦れて消える」

このような問題を経験したことがある企業も多いのではないでしょうか。

その理由を理解するために重要なのが、ダイン値(表面エネルギー)という考え方です。

ダイン値とは何か

ダイン値とは、
素材の表面がどれだけ液体を受け入れやすいかを表す数値です。

もう少し簡単に言うと、

インクや接着剤が広がりやすいかどうかを示す指標です。

例えば、水をガラスに垂らすと水は広がります。
しかし、テフロン加工のフライパンでは水滴は丸くなります。

これは表面エネルギーの違いによるものです。

  • 広がる → 表面エネルギーが高い
  • 弾く → 表面エネルギーが低い

ポリプロピレン(PP)は、後者の「弾く」性質を持つ素材です。

PPのダイン値は約30 dyn/cm

一般的に、印刷や接着が安定して行える目安は38 dyn/cm以上と言われています。

しかしPPの表面エネルギーは 約29〜31 dyn/cmと言われています。

つまり、印刷や接着にとってはかなり不利な条件なのです。

このためPP素材では

  • インクが広がらない
  • 接触面積が小さい
  • 密着が安定しない

といった問題が起こります。

「貼れた」と「使える」は違う

ここで重要なポイントがあります。

PP素材に対して、一時的に貼ること自体はそれほど難しくありません。

しかし実際の使用環境では

  • 擦過(こすれ)
  • 温度変化
  • 屋外環境

などの条件が加わります。

すると

  • 端部から剥がれる
  • 摩耗して消える
  • 表面が白くなる

といった問題が発生することがあります。

つまり、「貼れたこと」と「長く使えること」は別の問題なのです。

工業用途ではさらに条件が厳しい

例えばポリプロピレン製ヘルメットの場合、装飾ではなく安全装備として使用されます。

そのため表示部分にも

  • 表面硬度5H以上
  • 耐水性
  • 耐熱性
  • 耐擦過性
  • 屋外耐候

といった厳しい条件が求められます。

このような条件を満たしながらPP素材に安定して表示を定着させるためには、

単純に接着力を強くするだけでは解決しません。

重要なのは「界面設計」

低表面エネルギー素材では、

素材とインクが接する界面(interface)の設計が重要になります。

ここでは

  • 濡れ(Wetting)
  • 密着(Adhesion)
  • 応力(Stress)

という3つの要素が関係しています。

このバランスが崩れると、貼った直後は問題なく見えても
時間の経過とともに剥離や摩耗が発生します。

難素材を攻略するという発想

PPは印刷にとって難しい素材です。

しかし逆に言えば、

PPで成立する技術は、他の多くの素材でも安定して使える可能性が高い
ということでもあります。

ABS、PC、塗装面、金属部品

こうした素材では、PPほどの制約はありません。

難素材で成立する設計は、他の用途でも応用しやすいのです。

転写印刷は、「貼れたかどうか」で判断されることが多い技術です。

しかし工業用途では、数年後にどうなっているかそこまで考える必要があります。

もしPP素材や耐久用途での表示を検討されている場合は、
技術的な観点から一度ご相談ください。

データをご用意いただければ、A3サイズのインクシールとして販売可能です。
試作から量産前提の検証まで対応しています。

コメントを残す